おこのみっくす編集ライターが行く!食べ歩きエッセイ Vol.2

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となりの会話も聞き逃せない食のライブ空間
カレー編@薬師の大番

黄色い看板は若い食欲を刺激しそうだが、40をとうに越えた胃袋にはどうだろうか? そんな、ひねた平常心で入店。6人座ればいっぱいのカウンター。奥に向かって4つ並んだ丸椅子は空いていて、手前で左に折れた隅っこを、先客2人の背中が占めている。それまでの親密な時間を思い浮かべつつ、小さなテレビが見下ろす最奥へ。「カレ丸」を注文する。

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新井薬師の同じ場所で30年近く、親子2代が厨房を守るラーメン店「大番」。盛夏の午後1時過ぎ、今日の早番は父・近松通保さんだ。 常連が好んで使うという香辛料「紅椿」をひと匙加え、箸を入れたところで、左から人の声。

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「え、僕、沼津にいたんです」
先客の青年と店の大将が、同じ県の生まれだと分かったらしい。
(カレーラーメンは東日本に多い印象だが、店の基本スープは豚骨。はて、ルーツはと思っていたが、答えは静岡だったか・・・・・)
東西の食文化が中部の地で交わり、薬師に花開いた事情に納得していたが、大将に「全然関係ないですよ」と一笑に付された。

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気がつけば、青年の隣で先に箸を置いていた年配のご婦人(失礼!)が、静岡談義をリードしている。優しい辛味を舌に乗せつつ、愛知で育った不運を思っていると、ご婦人が1人席を立つ。「ご馳走さま。懐かしい話ができてよかったわ」
青年が腰を浮かす気配はない。それどころか、ご婦人に会釈して見送っているではないか。
(あの2人、親子じゃないのか……)
一緒に注文したミニカレーライスをすくったスプーンが、顎の前で固まった。(ライターH)

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投稿日時 2013-10-28

カテゴリー お店最新情報, 美味いっぴん, 食べ歩きエッセイ

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