仏像に序列がある?
仏像にはランクがあります。仏教の世界で一番偉いのは、「如来」の名がつく仏様。序列化すると次の通り。
①如来…「真実から来た者」という意味。仏教で最上の境地に達した存在。釈迦如来、阿弥陀如来など
②菩薩…如来のもとで悟りを目指す、いわば如来の候補生。観音菩薩、地蔵菩薩、弥勒菩薩など
③明王…怒りの形相で如来の教えに従わないものを正しい方向へ導く。不動明王、孔雀明王など
④天……仏教を信じる心を外敵から護るボディガード。武装している。梵天、帝釈天、金剛力士など
梅照院にあてはめると…
梅照院のご本尊は薬師如来。日光菩薩(煩悩を照らし諸苦の闇を消滅させる)と月光菩薩(やさしい慈しみの心を授ける)を脇侍として従えています。薬師如来という仏様は、人々を苦しみから救い出したいと「十二大願」を立て苦行に励んでいました。しかし、人々を惑わし苦しめる多くの魔障(ましょう:仏語で仏道の修行の妨げをなすもの)たちが、十二大願が成就しないように多くの妨害を企てます。この時、薬師如来を守護するため、魔障たちと戦ったのが「十二神将」。薬師如来を中央に十二の方位に陣を張り、いつ何時攻め入るか分からない魔障たちから護り続けています。また、十二神将は、阿弥陀如来や地蔵菩薩など仏様が姿を変えた化身とされています。
新井薬師・梅照院に舞い降りた平成の十二神将
一世紀半以上もの長い眠りから目覚めた十二の猛将たち。生命あるすべてのものを病や苦悩から救い出すため苦行に励む薬師如来を守るべく、まさに今、この地に揃い踏み
Introduction ――復活
これは、実物を見るべきだろう。というか、見なきゃソン。心にガツンとくるというか、鼓動が伝わるような高揚感を味わえるというか……いやはや、その姿を眼前にすれば、どんな形容も色褪せてしまう。新井薬師・梅照院で、焼失していた十二神将(じゅうにじんしょう)が145年ぶりにつくられ、5月25日、十二体の彫像に魂を入れる開眼法要が厳かに執り行われた。梅照院代々住職の悲願であり、地元の町会・自治会をはじめ復活を支援する実行委員が待ちに待っていた日がとうとう現実となったのだ。
Road of ――成就
新井薬師梅照院のご本尊は、弘法大師(空海)がつくり出したとされる「薬師瑠璃光如来(以下、薬師如来)」と「如意輪観音」の二仏が裏表一体になった黄金仏。古書によると、『明治元年に起きた大火によって、山門とご本尊を遺してすべて灰となってしまった』とある。その後、12年に一度の御開帳(寅年)ごとに、記念行事として境内の整備を実施、お堂の建立や墓地の補修などを実施し、現在の梅照院の姿が形づくられてきた。そして前回の平成22年度の御開帳記念行事として持ち上がったのが、十二神将の制作。ちょうど同時期に、「薬師如来の守り神がいないことがずっと気になっていた」と常々語っていた根本英昭住職と仏師・石黒氏が運命的に出会い、遂に、近隣住民や中野区の働きかけもあって十二神将復活プロジェクトが本格スタートする運びとなった。実に145年ぶりの十二神将復活に向け、総勢1300名にのぼる有志からご寄進が寄せられた。
Interview ――仏師・石黒氏
足立区梅田に工房を構える石黒見一(けんいち)氏、71歳。驚くことに、仏師という仕事は独学で切り開いてきたそう。「ひとつのことを覚えるのに時間がかかるけど、覚えたら二度と忘れない。人から聞いたことは忘れちゃうからね」と茶目っ気たっぷりに話してくれる。仏師という仕事柄、寡黙で近寄りがたいイメージがあったが、気さくでやわらかい表情は、まわりを癒やしてくれる空気感に溢れている。
2008年の元日から休みなく、5年の歳月をかけて十二神将完成までに注いだ執念たるや、生半可なものではない。ひと目見れば分かるが、筆遣いがとにかく緻密。鎧や着物の模様が糸のように細い線で描かれている。リアルそのもの。石黒氏がこだわったのは、「普通に着替えているようにちゃんと着物を着て武具を付けているようにつくること」。手に持つ道具や武器は着脱可能で、後で装着してピンで留めている。そのリアリティの最たる部分が、「眼(まなこ)」だ。梅照院の本堂内・上部におさめ、人々が見上げた時にピタッと視線が合う位置に描かれている。十二体すべてが寸分の狂いもなく、何重にも色を塗り重ねた眼はまさに生きているそれだ。
十二体は、一体ずつ仕上げるのではなく、ひとつの工程を十二体に施しながらバランスを見る。「人に任せられない性格だから」と弟子など取らず一人きりで作業しているからこそ、妥協はあり得ない。例えば、おおかた形づくる荒掘り工程で十二体すべてを掘り、押し並べて見て納得できなければ振り出しに戻ってつくり直した。「十二神将を見に来る人には、梅照院さんに置いた時の雰囲気を見てもらいたいし、お寺全体の良さを受け止めて欲しいなぁ。梅照院の皆さん、いい人ばかりだしねぇ」と石黒氏。工房には、根本英昭住職が中野から足繁く訪ね、完成までの経過を見守ったそう。大きな楠の木から十二神将たちが生み出される様を間近で見る時間は、何物にも代えられない歓びだっただろう。開眼法要のこの日、住職から石黒氏に「将来、文化遺産になるに違いない」と記された感謝状が手渡された。
●山門の石碑が新しくなりました
著名な書家・石飛博光(いしとびはっこう)氏の揮毫。これも直接見ることで、その迫力にふれてください !
▲お守りをはじめ、屏風やストラップ、ポストカードなど十二神将にまつわる品々
●おこのみっくすだけの十二神将情報公開!
十二神将それぞれの「ある部分」に、隠れミッキーならぬ、“隠れ梅マーク”が入っています。これは梅照院を守る十二神将ならではもの! 探してみてね!!
★ヒント:着物の模様のひとつになっていますよ♪
▲5月25日に開催された十二神将開眼法要に、この日を待ちわびた関係者約180人が詰めかけた
▲十二神将の手首にくくられた糸を持つことでご縁が結ばれる。自分の干支の大将の前に立つ人や、またすべての大将とご縁を結ぶ人の姿も
◆縁日がある「8」の日がチャンス!
参拝の際に、本堂の外から堂内上部に安置されている十二神将をご覧になれますが、 毎月8の付く縁日の日(8日・18日・28日)は、本堂の中に入って間近でご覧になれます(参拝時間9:00~16:30)
真言宗豊山派
新井薬師 梅照院
中野区新井5-3-5
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