やっぱり俺がやらなきゃ!! 中野に夏を呼ぶ男
「辞めたらラクになる、と何度も思った…」と中野チャンプルーフェスタ(通称、チャンフェス)実行委員会会長の長谷部さんが苦笑いした。開催当初は、「高円寺の阿波踊り」が目標だった。50余年の歴史があり、参加する連の質は高く、観客数も増大し、中央線沿線有数の夏祭りのひとつである。一方、10年目のチャンフェスはどうだろう?
踊りの質、中野のエイサー団体や観客数など、長谷部さんの思い通りになかなか進まない。
エイサーは、沖縄のお盆時期に行われる先祖供養の念仏踊りで、地元の青年会が担う伝統芸能だ。最近では、ポップな楽曲と軽快な踊りの創作エイサーも流行っているが、長谷部さんが理想とするチャンフェスでは、伝統エイサーにこだわり、町を練り歩く“道ジュネー ”を続けたい。もっと上を目指そうとする踊り手の意識があれば、エイサーの質は上がり観客を魅了する。結果、祭りはもっと盛り上がるはず!! だが、長谷部さんの思いは伝わらず、もどかしさが募り、「この10年にありがとう!」とみなで喜びたい気持ちと「この先どうしよう」と素直に喜べない気持ちがせめぎ合う。1年を通じて約半年、チャンフェス開催前後の3カ月は、各商店街との折衝やエイサー団体の調整などにかかりきり。仕事や家庭は大切だが、最優先の順位が入れ替わることも多々ある。お金にもならない…と心の中で愚痴をこぼしつつ、多くの裏方が身を削って、家族の理解を得られなければ到底開催できないのがチャンフェスなのだ。
暫定広場はいつまで使えるのか? サンプラザはいつから工事なのか? 来年の開催場所は確定ではないけれど、かつてエイサーを踊っていた学生さんが、社会人になり、結婚して家族とともにチャンフェスを見に来てくれるうれしさは格別だ。「チャンフェスで中野の夏を感じて、氷川神社の神輿を見れば秋だなぁって…思える町ってやっぱりいいよね」。祭りが連動して、町にも活気を取り戻したいという思いは誰にも負けない。だから「やっぱり、自分がやらなきゃって思うんだよ」とようやく笑顔になった長谷部さん。中野に夏を呼ぶ男、来年も再来年も。